私の世界は、この部屋がすべてだ。窓はもう何年も開けていない。外の光は、ゴミの山の隙間から、細い筋となって差し込むだけ。それが、朝と夜を告げる唯一の時計だ。天井は、私の空だった。手を伸ばせば届きそうなほど、コンビニの袋や雑誌の束が迫っている。時々、バランスを崩したゴミが、ザザッと音を立てて崩れ落ちる。そのたびに、私はこのゴミの墓場で生き埋めになる自分の姿を想像する。食事は、このゴミの山をかき分けて作った小さなスペースで摂る。新しい弁当の容器を置くために、古い容器を一つ、横にずらす。それが、私の日常の片付けだ。眠る時は、少しだけ平らな衣類の山の上に、体を横たえる。柔らかくもなく、暖かくもない。ただ、ゴミの匂いに包まれていると、不思議と心が落ち着く。これが、私の匂いなのだ。かつては、この部屋もきれいだった。友人を招き、笑い合った日もあった。しかし、いつからだろう。心が疲れて、何もかもが億劫になった。ゴミを一つ捨てること。その単純な行為が、とてつもなく高いハードルのように感じられた。「明日やろう」その言葉を、何千回繰り返しただろうか。やがて、ゴミは私の城壁となった。誰もこの中には入ってこない。私も、この外には出たくない。チャイムの音には耳を塞ぎ、郵便受けはとうに見るのをやめた。私は、社会から消えた人間なのだ。でも、時々、夢を見る。天井まで何もない、がらんとしたこの部屋で、大きく深呼吸する夢を。窓を開け放ち、新鮮な風を胸いっぱいに吸い込む夢を。夢から覚めると、目の前にはいつもの天井がある。ゴミに覆われた、私の空が。いつか、この空が崩れ落ちて、私を飲み込む日が来るのだろうか。それは、罰なのか、それとも救いなのか。今の私には、もうわからない。